2009年4月2日木曜日

ウラディミール・ナボコフ 『ロリータ』

「ロリータ、我が命の光り、我が腰の炎。我が罪、我が魂。ロ・リー・タ。……」
世界文学の最高傑作と呼ばれながら、ここまで誤解多き作品も数少ない。中年男の少女への倒錯した恋を描く恋愛小説であると同時に、ミステリでありロード・ノヴェルであり、今も論争が続く文学的謎を孕む至高の存在でもある。多様な読みを可能とする「真の古典」の、ときに爆笑を、ときに涙を誘う決定版新訳。注釈付。

さて、この小説を前に僕は何をいうことができるんだろう。読み終えてしまった、けれどもまだ読み終えていないような不思議な読後感です。あまりにも執拗な文学作品・作家への言及、言葉遊び。この言葉遊びが、いわゆる「亡命作家」であるナボコフにとってどれだけの意味を持っていたんだろう。年を経てから英語を習得した作家にとって、英語で「遊ぶ」ことのもつ意味、ただの馴致ではなく、それで遊ぶということ。
この小説には全てがつまっている。けれども僕にはその一部しか掴めていない。もどかしい、けれどもそれが心地よかったりもする。
高尚なものと低俗なもの、肉体と精神、現実と幻想、正常と狂気。そうしたものが矛盾なく渾然一体となって、その小説のなかに浮遊している。あるいはこう考えるべきなのかもしれない。こうした二項対立的図式において両者の間には絶対的に線が引かれていると考えてしまいがちだけれども、そうではなくもともと一つのものなのだ―ちょうど一枚のコインの表と裏のように。

そう遠くないいつか、僕はこの本を読み返すことになる。そのときはもう少しまともなコメントができるかもしれない。



0 件のコメント: