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2010年1月22日金曜日

キャサリン・ベルシー 『ポスト構造主義』

ソシュールの言語論を端緒にうまれた,フーコー,デリダから,ジジェクやリオタールへと至る現代思想の潮流.「ポスト構造主義」と呼ばれる彼らの思想の可能性を,「ことばの意味」の決定システムを手がかりにあざやかに解説する.単なる知的ゲームでは決してない,「主体」のなんたるかを徹底的に問う骨太の議論の流れがみえてくる.

『文化と現実界』の著者ですね、あの本はなかなか面白かった気がする。とはいえ、きちんと咀嚼できたはずはなく、読み返したい気むんむんですが。印象的だったのはジジェクに対しての批判だったろうか。とりわけ〈現実界〉に関して。これは未だに納得いきかねる部分で、『否定的なものの下への滞留』がポイントになるのかもしれないのだけれど、勉強不足でむりだったんですね。がっかり。大雑把にいえばラカニアンでありながらヘーゲリアンでもあることなど可能なのか。それはラカンにおける〈現実界〉をやがて呑み込まれてしまう「残余」として扱ってしまうことになるのではないか、という批判だった(ような気がする)。まぁそれは別の機会に。

とにかく。
なぜかこの本だけ著者名が「ベルジー」となっていて混乱しますが(Amazonでは別の著者の扱いになってる)、同一人物です。たぶん、岩波の人はこの本を訳すにあたって「1冊でわかる」シリーズと銘打ったことを後悔したでしょう(しなきゃダメだよね)。あくまでこれはA Very Short Introductionであって、「1冊でわかる」というコンセプトで作ったわけじゃないんだから。このシリーズはいいですね。ダナ・アーノルド『美術史』に続いて読みましたが、勉強になります。このシリーズはもっと読みすすめてみようか。
ソシュール、クリステヴァ、ロラン・バルト、アルチュセール、レヴィ=ストロース、フーコー、ラカン、デリダ、リオタールへ。文体も平易で、一歩ずつ踏みしめながら進んでいってくれるので、安心して付いていける。入門書としてはとてもいいですね。ポスト構造主義とかポストモダンって結局はさぁ~、とかいいたがりな人、それに言い返したいけれどどういえばいいかわからない人、おすすめです。それってただのブームでしょ、とかもう過去の話でしょ、とかよくわからないのに口走っちゃう人、おすすめです。
文学、芸術作品、映画などにも再三にわたって言及していて、図版も入ってますし、ある程度前提のある人にもいいブラッシュアップになるんじゃないでしょうか。ただ、あとがきで妙な口調で訳者が言うように「わかる」わけではない。あくまでもこの本は導入です。そして導入としては最適な著作だと思います。読書案内も付いていますし(訳者の一言コメントつき)。なんだかロラン・バルト、気になります。『神話作用』読んでみたい。『S/Z』読んでみたい。「テクストの向こう側には何もない」 何かがあるとすればテクストと「読者」のあいだにおいて、だろうか。テクストそれ自体を読むこと。気になる。

2009年11月21日土曜日

ダナ・アーノルド 『美術史』

巨匠の傑作や様式中心の考え方を批判し,美術を社会や文化,人間との関わりの中で捉えかえす現代の美術史学は,何をテーマとし,どんな議論を行なっているのか.イースター島の巨像からモネの絵画,前衛芸術,さらにはビデオゲームのキャラクターまで,多様な視覚的素材を用いながら,美術について考えるさまざまな視点や方法を解説.

岩波の「1冊でわかる」シリーズ。Oxford University Pressから出ているVery Short Introductionsシリーズの翻訳ですね。この岩波からの翻訳は最新刊が今年の2月にも出ており、翻訳自体も続いているようです。でもそれ以上のペースで原著が刊行されているようで。あんま売れないかもしれないけど(僕が買ったのは2刷)がんばって欲しいものです。このシリーズはいいですね。ポスト構造主義についてキャサリン・ベルシー(『文化と現実界』は面白い)が書いていたり、文学理論をジョナサン・カラーが書いていたり、ヨーロッパ大陸の哲学をクリッチリーが書いていたり。多くは積読状態が続いていますが、本棚に並べてるだけでもきれいですね。

この本は美術史を叙述する(それこそ高階さんの『近代絵画史』のような)ものではありません。それを期待すると間違いなく肩透かしを食らうことになります。どちらかというと美術史や美術史学の有り様、系譜、問題点などについて整理しています。ポスト・コロニアリズム批評やフェミニズム批評、そしてマルクス主義が美術史(学)に与えた影響にも眼を配りつつ、更には視覚文化研究との結節点にも言及した、とてもバランスのよい入門書ではないか、という印象を受けました。美術と思想の関係についても、決して十分とはいえませんが、ある程度分量を割いて言及しています。キーワード集も、ちょっとした勘違いや知ったつもりになっていた言葉を捉えなおすのにいいかもしれません。また巻末の解説も、美術史学、また日本近代美術に対して関心がある人には役に立つものだと思います。まぁ1500円を高いと思うか安いと思うかによるとは思いますが、個人的には買ってよかったな、という感じです。