本書では、ともすれば専門用語の羅列へと傾きがちな、それゆえ「難解」なボードリヤールの消費社会論を、社会学とりわけ「コミュニケーション」の観点から、初学者にとって理解しやすいよう可能な限り平易に読み解いていきたい。そして、読者に、ボードリヤールの消費社会論を現代の諸現象を分析するための有効な理論枠組のひとつとして活用してもらうことを目指す。
本書の構成としては、ボードリヤールの消費社会論の基本的な考え方を、各講の末尾に「命題」という形でコンパクトにまとめて提示する。各講でひとつずつ命題を提示することによって、ボードリヤールの消費社会論を読者に無理なく段階的に理解してもらうと同時に、各命題によってどのような現象が分析されるか、その「使い勝手のよさ」も段階的に確認してもらえればと思う。(「はしがき」より)
「早稲田社会学ブックレット」なるマイナーなブックレットシリーズがあります。このシリーズは更に、「社会学のポテンシャル」「社会調査のリテラシー」「現代社会学のトピックス」という3つに分かれています。そのうちの「現代社会学のトピックス」の1冊です。
有り体に言って、上の紹介文に書いてあることが全てです。つまりさくっと読めるボードリヤール消費社会論の入門書、です。
矢部さんがまず指摘するのは、ボードリヤールの消費社会論を果たして日本の社会学はちゃんと受け止めてきたのか、という問いです。ポストモダンブームのなかで、ボードリヤールも彼の消費社会論も流行し消費されていった、結果としてボードリヤールも消費社会論も時代遅れだよ、なんて言われるようになってしまったということだと思います。もちろん、社会学の講義のなかで、ほぼ必ず消費社会論には時間を割くだろうけれども、それはボードリヤールの議論を額面通り、表面的に受け取っただけの議論に終始してしまっていて、十分に社会学としてボードリヤールの投げかけたものを深化させてこなかったのではないか、という反省なのだと思います。その反省に立って、社会学としてボードリヤールの議論をリブートさせよう、ということを彼は目指しているのだと思います。ただ、この本はあくまで入門書なので、彼が目指す、社会学的にボードリヤールの議論を深化させるということ自体があまり見えてきません。これは少し残念です。
とはいえ、こんな薄っぺらいブックレットでも、平易な言葉で分かりやすく噛み砕いて、しかも一定の質を担保したまま消費社会論を紹介してみせる矢部さんというのは力のある研究者なのかもしれません。今後が楽しみですね。
あと気になるのはボードリヤール=消費社会論みたいなのってどうなんでしょう。読んでみないと分かりませんが、ボードリヤールも近いうちに読み直しが進むのかもしれませんね。
そうそう消費社会論についてはひとつ気になる切り口があるのですが、それはもう少し勉強してからにしたいと思います。
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