2010年1月2日土曜日

平野啓一郎 『ドーン』

最高の純文学にして究極のエンターテインメント! 2033年、人類で初めて火星に降りたった宇宙飛行士・佐野明日人。しかし、宇宙船「DAWN」の中ではある事件が起きていた。世界的英雄・明日人を巻き込む人類を揺るがす秘密とは?

Amazonレビューは高評価ですが、僕的にはイマイチです。
いや、きっと言いたいこと、考えたいことが色々あって、それらを真摯に小説に詰め込んだんだろうし、宇宙船からネットメディア、監視社会、国際関係やアメリカの選挙にいたるまで、これだけ詰め込める、描きこめるというのは評価されるべきなんだろう。分人主義dividualismとか不領土国家とかアイディアもおもしろいのかもしれない。でも分人主義ってだから何だね?って感じです。ゴッフマン的な話かと思ったらそれだけじゃないような感じになっていって、なんでもかんでもこの言葉で片付けようとしていく。便利でかっこいい言葉ですが。
不領土国家もすごいですね、脱‐領土化とか再‐領土化とか話している中でいきなり「不」領土国家ですからね。しかも信託(?)会社がやっているような感じの描き方もなかなかはっちゃけているなぁ、と。
でも全体的にはこれ面白くなかったんですね。なんでだろう。まず文章自体に色気が全くないのが嫌ですね。それに人間がロボットくんとロボットさんみたい。血が通ってない、平野さんのマリオネットでしかない。あとせっかく初めて火星に降り立ったんなら火星の話をもっとしてくれよ、とか思ったり。「最高の純文学」(惹句より)なら誰も行ったことがない火星の様子を文学的に表現してみせてくれよ、と。もはや言いがかりですが。
色々アイディアや思うところはあるんだろうけど、「詰め込みすぎ」です。散漫な感じ。総じて、登場人物も火星への有人探査も、大統領選もすべては舞台とその書割でしかない。内容は平野さんの独り語りです。ちなみに僕は無重力空間で人はいかにして性交渉を行うのか、そればっかり気になりました。

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