2009年9月22日火曜日

青木淳悟 『四十日と四十夜のメルヘン』

配りきれないチラシが層をなす部屋で、自分だけのメルヘンを完成させようとする「わたし」。つけ始めた日記にわずか四日間の現実さえ充分に再現できていないと気付いたので……。新潮新人賞選考委員に「ピンチョンが現れた!」と言わしめた若き異才による、読むほどに豊穣な意味を産みだす驚きの物語。綿密な考証と上質なユーモアで描く人類創世譚「クレーターのほとりで」併録。

なんだかここんとこ日本の最近の若い作家さんの作品を読んでばかりですが。読んでるとそこそこ面白かったんだけど、読後になるとどうも感想を書きづらい。困ったことですね。『四十日と四十夜のメルヘン』もまた然り。駄作か傑作かと聞かれたら、「まぁ傑作っていうには程遠いかなぁ」としか答えようがない。読んでる時はそれなりに楽しいんですけどね。「チラシの裏」は日記というか、どうでもよくて誰のためにもならないようなぐだぐだした記述を書くところ。ネット掲示板で、かつてはそんなことを言われたものですが、この小説ではそのチラシの裏になんだかよくわかんないメルヘンを書いてみたり。けど最近は裏紙の使える広告ってほとんどないんですよね、わかります。
さて、この小説は迷宮ってほどかっこよくはないけれども、どこか歪な感じ。なんだか下井草だかそのへんのどうでもいい描写から始まり、隣駅のスーパーが安いとか、駅の出口が片方しかないのは商店街の陰謀だとかこれまたどうでもいい話になって、お師匠さんと仰ぐなんとか先生の小説についてながながと。読んでいるとなんかおかしいなぁ、ってなって最後は「あれ?」ってなる。読んでいく途中で出てくる話はどっか前に出てきたことあるなぁ、って思ったり、気づいたらなんとなく人が代わってたり。別に適当に書いてるってわけじゃなくて、まぁ確信犯でやってるのが若干見え透いてるあたりがやらしいとこですが。ただ、僕の場合「あれ?」とは思ったけど読み返そうとは思わなかったですね。なんか億劫で。これ読み返す時間あったら別の本読むかなぁ。つまらないってわけではないですが。ついでに言えばこの文庫本、級数大きいよね。もっと小さくしてページ数減らせばよかったのに。文庫でこのサイズだとかえって読みにくいんですけど。

あぁそうだ、ピンチョンは現れていませんので、ご安心を。『ヴァインランド』、ようやく次回の配本ですか。まぁ新訳じゃないし、さっさと新潮版を買えばよかったとも思うんだけどなぜかここまで待っちゃいました。早く読みたいなぁ。

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