スペインに亡命中のアルゼンチン人作家と〈僕〉との奇妙な友情を描く「センシニ」をはじめ、心を揺さぶる14の人生の物語。ラテンアメリカの新たな巨匠による、初期の傑作短編集。
エクス・リブリスの先頭を華々しく飾るはずだったボラーニョ、延期が決まってどうなるかと思ったんですけど無事刊行されてなによりです。チェーホフ、カフカ、カーヴァー、ボルヘス、ウディ・アレン、タランティーノ、ロートレアモン…錚々たる面々の融合と受容がある、とか書いてあって、「ホントかよ!」とか「どんなんだよ!」突っ込みながら買ったんですが、まぁそれはさておき、非常によかったです。総じてドライな文体、マッカーシーやカーヴァー、デリーロやデニス・ジョンソンを髣髴とさせる。淡々と物語る姿勢、それによって悲哀やら可笑しさが際立ってくる。自分からも遠く距離を置いたような独白や、その対極にあるかのような率直な表現、不遇や何かしらの喪失感を抱えて生きる人々の生、節合的で刹那的なふれあい、それが一体となって読み手の心を揺さぶる、そんな感じです。会話だけで小説を構成したり、あるいは改行をほとんど設けずに語り続けたり、小説ごとに様々な技巧を凝らしている、それがそれぞれの物語ととてもよく調和しているように思います。
長編も同シリーズから刊行されるようなので、こちらも楽しみです。
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