アーレント的思考が、現代社会を救う! 閉塞した時代だからこそ、全体主義を疑い、人間の本性・公共性を探る試み 20世紀を代表する政治哲学者が、なぜいま再評価されるのか。人間の本性や社会の公共性を探った彼女の難解な思考の軌跡を辿り直し、私たちがいま生きる社会を見つめ直す試み。
さて、かなり売行き好調な講談社現代新書の新刊です。仲正はやっぱり売れますね、何でだろうと思いますが。
3月にアーレントの『カント政治哲学講義録』の翻訳を上梓し、引き続いて『〈学問〉の取扱説明書』なる新刊も。絶好調ですね。
さて、「いまなぜアーレントなのか?」
ある研究者によると90年代以降のアーレントの再評価は東欧などにおける同時革命が端緒になったという。東欧における非‐暴力的な革命の解釈を巡ってラディカル・デモクラシー(ムフを筆頭として)など「デモクラシー」にまつわる新たな地平が切り開かれた。齋藤純一も『政治の複数性』のなかでラディカル・デモクラシーを思想的に練り上げる中で(ニーチェらと並置しつつ)アーレントについて言及を行っていた。こうしたやり方でアーレントを扱うことに疑問を覚えると先の研究者は指摘していたが。とはいえ、本書において仲正がアーレントを扱うのはそうした文脈とは異なっている。一言でいってしまえば「分かりやすさ」批判の一端としてだ。それでいいのか、とは思わなくもないですが、まぁ色々な読みができるということで。
はっきりいって彼の文章は好きではありません。癖があるとか独特とかそういった次元ではなく、美しくない、全く練り上げられていない。まぁ新書だからあえてこういう書き方をしているんだと好意的に解釈しましょうか(新書だから文体が適当でいい訳はないと思いますが)。
内容は悪くないんじゃないでしょうか。1~3章は彼女の思想の最も際立つ部分だけを掴み取り、「分かりやすく」噛み砕いて(噛み砕きすぎ感もありますが)説明しているなあと。アーレントに触れたことがある人は、さくさく流して読んでいくことと思います。
個人的には4章がとても面白かったですね。アーレントがなぜ最後にカントの『判断力批判』に依拠して思想を展開しようとしていたのか?この問いに対する一つの答えを非常に理知的に説明していたのではないかと。むしろこの4章の内容だけに絞ってもっと詳しく議論を展開して欲しかったくらいですが。あ、それは『カント政治哲学講義録』の解題でやってるのかな?
アーレント、あまり読んでこなかったなぁ。ちくま学芸文庫から『人間の条件』『暗い時代の人々』『革命について』は出てるんですよね、できれば他の著書も出して欲しい。とくに『全体主義の起原』は。みすずが版権を手放さないのかな。どれも学部生の時に読んだはずなのにほとんど印象に残っていないというのは、きっと読めてなかったってことなんですね。あーあ。時間があれば読み直したいけれど。
ってことで、値段的なことも踏まえればアーレントの入門書としてはいいんじゃないでしょうか。僕は彼の文章と相性が良くないようですが、それなりに評判はいいみたいですし。
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