2010年7月20日火曜日

久生十蘭 『久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集』

「小説というものが、無から有を生ぜしめる一種の手品だとすれば、まさに久生十蘭の短篇こそ、それだという気がする」と澁澤龍彦が評した文体の魔術師の、絢爛耽美なめくるめく綺想の世界。

久生十蘭初めて読んだなぁー。時代物、幻想譚、ミステリー、歴史小説風、アメリカもの、ユーモア……僅か10編だけど、なるほど多彩ですね。主に口述筆記で書いていたらしいことを知ってびっくり。口述筆記で小説を紡ぐってなかなかイメージがわかないなぁ。頭の中で物語を創り上げているってことなのか。それにしては文章も雰囲気があっていいですね。口述筆記で輪郭を固めた後に、文章を練り上げていったんでしょうか。
「南部の鼻曲がり」(1946年)で日系人を取り上げたり、「美国横断鉄道」(1952年)では鉄道建設での中国系移民に対する残虐な扱いを暴露したり、となかなか面白い。作品が発表された時期を見ると思わずにやりとしてしまいます。「遣米日記」は1942年ですか。
全集買う気にはならないけどもう少し読んでみたいな。
文庫だと、今手に入るのは岩波から出た短編集と講談社文芸文庫のやつくらいだろうか。

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