夫の浮気を知ったアンは、決然とすべての生活を“処分”して、新たな人生を始めるための旅に出る。さまざまな出逢いが交錯し、思いがけない事態が迫りくる。彼女は安らぎの場所を見いだせるのか?…現代フランスを代表する作家の集大成にして傑作長篇。
完全にやられてしまいました。今年読んだ本のなかでトップ3に入るんじゃないか、と思うくらい。ページを早く捲りたい、けれども捲る毎に残りページが少なくなっていくのが惜しくてしょうがない。一節一節の文章の美しさに陶然としていると、あっという間にページ数と時間が過ぎ去っていく。終わって欲しくない、いつまでもこの世界が続いて欲しいと思わず願ってしまうようなそんな小説。何だろう、行間すら、版面の文字と空白のバランスすらも美しい、といったらさすがに褒め過ぎだろうか。そんな風に感じるほど、とにかく僕はこの小説にやられてしまったのです。
何でなのか。それを説明しなきゃ何も伝わらないし、できればそれを言葉にして伝えたい、と思うのだけれどどうもうまくいかない。ちょうど、ジョルジュがアンを愛し、アンがアマリアの別荘とレナを愛したように、訳も分からず惹かれてしまったのだ、……とでもいえば格好がつくだろうか。アン・イダンという女性を軸に物語は進むのだけれど、時折人称は入れ替わる。入れ替わるようで入れ替わらない。アンの一人称のような、三人称のような。アンは「私」であり「彼女」でもあり「アン」でもあり、「エリアンヌ」でもある。時に「私」はアンであり、シャルルでもある。この距離感とその揺れ動きが絶妙なリズムで折り重ねられる。そして、随所に見られる音楽への言及。音楽的という言葉が指す内容はよく分からないけれど、確かに構成なんか交響曲っぽいのかな。後付けですが。そういえば小説も楽譜も同じく紙とインクからできているんだった。
何がそんなにいいのか全く伝わらないままですが、とりあえず、おすすめです。
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