2009年10月31日土曜日

アラン・ムーア 『フロム・ヘル 上・下』

鬼才として知られるコミック原作者アラン・ムーアによるグラフィック・ノベルの傑作。ムーアが自作のなかでも特に達成度の高い一作と自負し、彼の際立った作家性に触れることのできる格好の作品である。
いわゆる「切り裂きジャック」の連続殺人事件が本作のモチーフ。ノンフィクション・ノベルに奇想をはめこんだような巧妙なプロットに、ムーアの本領たるダイナミックな構成力、奥行きのある世界観・人間観が活かされている。丹念に再現されたヴィクトリア朝末期の英国社会に、いくつもの象徴が生み出す複雑な磁場がはりめぐらされる。キャンベルの画との絶妙のコラボレーションにより、狂気の犯人しか知らないはずの場面までが、まさに圧巻の幻視力をもって描き出されている。
静止画の存在感をもつ各コマに込められた意味とニュアンスを読み解きながら、その世界に浸りたい。19世紀末ロンドンの陰鬱な景色が、巻を閉じた後も読む者の目に焼きついているだろう。
小説的な読み心地と鮮烈な絵の力を兼ね備え、サスペンスとイリュージョンに満ちた、無類のエンターテイメント。全2巻。


一気読みでした、正確にいえば上巻と下巻との間に食事を取ったけど。おもしれーなぁ、エログロ満載でフリーメイソンやらも絡んでくる、サブカル臭がむんむんします。切り裂きジャックのことはよく知らないし、さほどの興味もないんだけど、へぇ~、とかふーんとかえぇっ!とかグロっ!!とか呟きながら読んでました。終わったと思ったら、今度は膨大な注記が…途中まではちゃんと見返したりしながら読んでたのですが、途中で力尽きて流し読みでした。全部読み返したいとは思うけど、さすがにげっそりしてしまって、また今度にしようと思います。しかし、世紀末ロンドンの街並みや広告、衣装、部屋の造りなんかもここまで描いてみせる力はすごいですね、なんというかどんよりじめじめとした空気が伝わってくるようでした。

真面目に感想を書きたいところもあるのですが、それはいつか読み返した時にでも。

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