ネオリベラリズムが主導するグローバリゼーションの下、世界各国で「スラム化」が進行、10億を超えるスラム居住者が生まれている。都市問題の論客デイヴィスがその現状と構造を鋭く抉り、貧困の世界的な同時進行にどう立ち向かうかを考察する。待望の邦訳。
これは先週に読み終えた本。なんだかいまいちでしたね。『要塞都市L.A.』みたいなのを期待していたのに、ひたすらと国連のレポートやら他の人の研究やらを書き連ねているばかり。フィールドワークをしたわけじゃなくて、二次文献を整理している、もっと有り体に言ってしまえば、整理も資料の精査もせずにただ盛り込んでいるだけ、のような気がします。『要塞都市〜』を読んだのはだいぶ前で、手元にもないので分かりませんが、マイク・デイヴィスってこんな感じだったっけ?と思ってしまいます。
確かにこれだけ書き連ねれば、スラム化という現象が世界中で生じていることはよく分かる。けれども、何も見えてこない。実態とかけ離れた開発計画なんかを批判するけれど(もちろんその批判は真っ当だと思う)、マイク・デイヴィスのこの著作もまた、実態を描くということ、そこに住んでいる人の生を描くということとはほど遠いのだろう。果たして、(こと第三世界における)都市貧困と「スラム化」というものは常にイコールなのか。彼が「スラム化」と指しているものは何なのか。彼はそれぞれの地域、国家、都市によって異なる文脈があるにもかかわらず、それを安易に「スラム化」と名指すことによって、問題を単純化し、見誤ってしまっているのではないか。そんな疑問をもつ読者もいるだろう。だから、都市研究、特にスラムなどの研究にはエスノグラフィックな調査が必要だと思うし、それをせずにひたすら統計データと二次資料を積み重ねていく彼の手法には正直感心しなかった。都市スラムのエスノグラフィックな調査のほうが、個人的には読んでいて楽しいので。そういえば昔読んだ松田素二さんの『抵抗する都市』なんか面白かったなぁ。あれ、『都市を飼い馴らす』のほうだっけか、ナイロビのやつ。まぁいいや。
いくら手法は単調だとはいっても、時折見せる分析はやはり鋭いし、エピローグなんかはけっこう面白かった。明石書店だし、買いかどうかは微妙ですが、図書館などで読む分にはいいのかもしれません。「都市」って最近気になる、という人にも。
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