腹を食い破る蛇、悪霊たちの打擲、四肢を断ち切る処刑人、灼熱と悪臭……
想像を絶する責め苦と試練が待ち受ける西欧版地獄とは?
12世紀、ヨーロッパを席巻した冥界巡り譚「聖パトリキウスの煉獄」「トゥヌクダルスの幻視」を収録。2人の騎士は臨死体験を通して、異界を訪問する。無数の悪霊の襲来から始まり、灼熱、悪臭、寒冷、虫、蛇、猛獣が跋扈する煉獄で、執拗な拷問と懲罰を受けた後、甘美にして至福の天国を見学し、現世へと帰還する。中世人の死生観を熟読玩味する。
しばらくパソコンから離れた生活を送っていたので、なかなか書けませんでした。その間に、何冊か本を読み終えたのですがだいぶ時間が経っているので、とりあえず読んだ本の紹介程度に。また7月からはちゃんとしたいと思うのですが。
ってことで、3週間ほど前に読んだ、講談社学術文庫「西洋中世奇譚」シリーズの新刊。「トゥヌクダルスの幻視」と「聖パトリキウスの煉獄」の二篇を収めています。『神曲』を読んでいて地獄篇の拷問場面が一番面白かった、という人にはおすすめです。『神曲』ってやっぱ洗練されているんだなぁ、こっちはもっと露骨にえぐいです。神曲は地獄→煉獄→天国だけども、この二篇では、どちらも天国には行かないんですね。煉獄の最後にある地上の楽園止まりだったと記憶しています。「幻視」というのはとても面白いテーマで、以前ヴィクトル・ストイキツァの『幻視絵画の詩学』という本を読んで感銘を受けたことがあります。といってもあの本で扱っているのは16〜17世紀ごろのスペインの宗教画でしたが。ただ、幻視を描く宗教画と、こういった幻視譚はそれが担った役割においては似ているところがあるのかもしれません。こういった煉獄譚が当時、誰にどのように読まれていたのか、その辺は気になるところですね。平民の生活を(自発的に)統制/管理するための技術、みたいな役割を果たしていたであろうことは予測がつきますが、それだけに尽きない魅力があるようにも思います。
詳細な解説も魅力。
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