2009年11月21日土曜日

ダナ・アーノルド 『美術史』

巨匠の傑作や様式中心の考え方を批判し,美術を社会や文化,人間との関わりの中で捉えかえす現代の美術史学は,何をテーマとし,どんな議論を行なっているのか.イースター島の巨像からモネの絵画,前衛芸術,さらにはビデオゲームのキャラクターまで,多様な視覚的素材を用いながら,美術について考えるさまざまな視点や方法を解説.

岩波の「1冊でわかる」シリーズ。Oxford University Pressから出ているVery Short Introductionsシリーズの翻訳ですね。この岩波からの翻訳は最新刊が今年の2月にも出ており、翻訳自体も続いているようです。でもそれ以上のペースで原著が刊行されているようで。あんま売れないかもしれないけど(僕が買ったのは2刷)がんばって欲しいものです。このシリーズはいいですね。ポスト構造主義についてキャサリン・ベルシー(『文化と現実界』は面白い)が書いていたり、文学理論をジョナサン・カラーが書いていたり、ヨーロッパ大陸の哲学をクリッチリーが書いていたり。多くは積読状態が続いていますが、本棚に並べてるだけでもきれいですね。

この本は美術史を叙述する(それこそ高階さんの『近代絵画史』のような)ものではありません。それを期待すると間違いなく肩透かしを食らうことになります。どちらかというと美術史や美術史学の有り様、系譜、問題点などについて整理しています。ポスト・コロニアリズム批評やフェミニズム批評、そしてマルクス主義が美術史(学)に与えた影響にも眼を配りつつ、更には視覚文化研究との結節点にも言及した、とてもバランスのよい入門書ではないか、という印象を受けました。美術と思想の関係についても、決して十分とはいえませんが、ある程度分量を割いて言及しています。キーワード集も、ちょっとした勘違いや知ったつもりになっていた言葉を捉えなおすのにいいかもしれません。また巻末の解説も、美術史学、また日本近代美術に対して関心がある人には役に立つものだと思います。まぁ1500円を高いと思うか安いと思うかによるとは思いますが、個人的には買ってよかったな、という感じです。

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